眼鏡業界では、専門的な知識と技術を持つ技術者が求められています。「眼鏡関連の資格の種類」を理解することは、信頼できる眼鏡技術者を見極めるためにも、業界で活躍するためにも重要です。
この記事では、眼鏡作製技能士や視能訓練士、オプトメトリストなど、国家資格や民間資格を含むさまざまな眼鏡関連資格について詳しく解説します。資格の特徴や取得方法、難易度の違いを知ることで、自分に合った資格を選ぶ手助けとなるでしょう。
- 眼鏡関連の資格の種類と、それぞれの特徴が理解できる
- 国家資格と民間資格の違いを知ることができる
- 眼鏡業界で役立つ資格の取得方法と難易度がわかる
- どの資格がどの職種で活かせるのかを理解できる
もくじ
眼鏡関連の資格の種類:特徴と役割
- 眼鏡の資格を知る意味
- 眼鏡関連の資格一覧
- 眼鏡作製技能士(国家資格)
- 認定眼鏡士(旧民間資格)
- オプトメトリスト(主に海外の資格)
- 視能訓練士(国家資格・医療系)
- その他の眼鏡関連資格
眼鏡の資格を知る意味
眼鏡を選ぶ際、多くの人は「よく見える眼鏡」を求めます。しかし、その実現には専門的な知識と技術が不可欠です。眼鏡店にはさまざまな資格を持つスタッフが在籍しており、それぞれの資格がどのような役割を果たし、眼鏡選びにどのように関わるのかを知ることは、信頼できる眼鏡店を選ぶうえで重要なポイントとなります。
また、眼鏡業界で働く人にとっても、資格の知識は自身のキャリアアップや専門性の向上に役立ちます。業界には複数の資格が存在し、それぞれ異なる役割を持っています。
この記事では、眼鏡に関する主な資格として、国家資格である眼鏡作製技能士、かつて存在した認定眼鏡士、海外で広く認知されているオプトメトリスト、そして医療分野で活躍する視能訓練士について詳しく解説します。それぞれの資格の違いや特徴を理解することで、より安心して眼鏡を選ぶことができるようになるでしょう。
眼鏡関連の資格一覧
1. 眼鏡作製技能士(国家資格)
- 概要: 2022年に制定された、日本唯一の眼鏡作製に関する国家資格。
- 取得方法:
- 1級: 実務経験7年以上または2級取得後2年以上の経験が必要。
- 2級: 実務経験2年以上が必要。
- 学科・実技試験に合格することで取得可能。
- 役割: 眼鏡のフィッティング、レンズ加工、視力測定補助、適切なレンズ提案など。
- 重要度: ★★★★★(最重要)
- 国家資格のため、眼鏡業界での信頼性が高い。
- 今後の業界標準になる可能性が高い。
2. 視能訓練士(国家資格・医療系)
- 概要: 眼科医の指示のもと、視機能検査やリハビリを行う専門職。医療職に分類される。
- 取得方法: 指定の大学や専門学校で学び、国家試験に合格することで取得。
- 役割: 斜視・弱視などの視機能障害の検査・訓練、視力測定、視覚リハビリテーション。
- 重要度: ★★★★★(医療分野で最重要)
- 眼鏡店ではなく、眼科クリニックや病院で活躍する。
- 眼鏡業界とは異なるが、医療機関と連携する際には役立つ。
3. 認定眼鏡士(民間資格・廃止)
- 概要: 眼鏡の専門知識・技術を証明する資格で、S級・SS級・SSS級とランクがある。
- 取得方法: 眼鏡作製技能士へ移行
- 役割: 眼鏡のフィッティング、視力測定補助、適切なレンズ選定、視機能アドバイスなど。
- 重要度: ★★★★☆(高め)
- 国家資格ではないが、業界内での評価は高い。
- 眼鏡作製技能士の制定により廃止されたが、有資格者の技術と知識は現在も活かされている。
4. オプトメトリスト(民間資格・日本では非公的)
- 概要: 視機能検査、視力補正、視覚リハビリを行う専門職。海外では国家資格の国もある。
- 取得方法: 日本では正式な国家資格ではなく、日本オプトメトリック協会などが認定。
- 役割: 眼鏡やコンタクトレンズの処方、視機能トレーニング、視力測定など。
- 重要度: ★★★★☆(高め)
- 日本では認知度が低いが、視力測定の専門知識を持つ証明となる。
- 海外では国家資格の国もあり、将来的な発展が期待される。
5. 日本コンタクトレンズ学会認定 コンタクトレンズ検査技師(民間資格)
- 概要: コンタクトレンズの装用指導・検査を行う専門資格。
- 取得方法: 研修・試験を受けて取得。
- 役割: コンタクトレンズのフィッティングや視力測定補助。
- 重要度: ★★★☆☆(眼鏡よりもコンタクトレンズ業務向け)
- 眼鏡技術者ではなく、コンタクトレンズを扱う眼科・店舗向けの資格。
6. 光学技術者・光学機器関連資格(国家資格・民間資格)
- 概要: レンズの製造・加工・設計に関する技術者向けの資格。
- 取得方法: 研修・試験を受けることで取得可能。
- 役割: 眼鏡レンズの製造・品質管理・設計など。
- 重要度: ★★★☆☆(技術系の職種向け)
- 眼鏡販売員ではなく、メーカーや研究職向けの資格。
資格比較表
資格名 | 種類 | 重要度 | 特徴 |
---|---|---|---|
眼鏡作製技能士 | 国家資格 | ★★★★★ | 2022年制定、眼鏡技術者の標準資格になる可能性大。 |
視能訓練士 | 国家資格(医療) | ★★★★★ | 眼科医療職で、視機能検査・リハビリを担当。 |
認定眼鏡士 | 民間資格(廃止) | ★★★★☆ | 眼鏡技術者のスキル証明、S級・SS級・SSS級あり。 |
オプトメトリスト | 民間資格 | ★★★★☆ | 日本では公的資格ではないが、視機能の専門家資格。 |
コンタクトレンズ検査技師 | 民間資格 | ★★★☆☆ | コンタクトレンズの装用指導・検査向け。 |
光学技術者 | 国家資格・民間資格 | ★★★☆☆ | 眼鏡レンズの製造・設計に関する技術資格。 |
- 眼鏡作製技能士(国家資格)が業界標準になる可能性が高い。
- 視能訓練士は医療職として眼科分野で最も権威がある。
- 認定眼鏡士(SSS級)は業界での信頼性が高い。眼鏡作製技能士へ移行。
- オプトメトリストは海外での評価が高く、将来性がある。
眼鏡作製技能士(国家資格)
眼鏡作製技能士は、2022年に制定された日本で唯一の眼鏡作製に関する国家資格です。この資格は、職業能力開発促進法に基づき、厚生労働大臣が指定する日本眼鏡技術者協会が試験業務を実施する技能検定職種の一つとして導入されました。
この制度の目的は、眼鏡技術者の技能を客観的に評価し、業界共通の基準を確立することです。国家資格を設けることで、購入者が信頼できる眼鏡技術者や眼鏡店を選びやすくなるとともに、技術者自身のスキル向上やキャリアアップにもつながります。また、眼鏡作製に携わる職種の社会的地位向上や処遇改善を促進し、業界全体のレベルアップを目指しています。
1級と2級の等級
眼鏡作製技能士には、1級と2級の二つの等級があり、それぞれ求められる知識や技能の水準が異なります。
1級は「後進の目標となる眼鏡作製技能士」と位置づけられています。高度な技術と知識を持ち、市場のトレンドを把握しながら、顧客のニーズに応じた最適な眼鏡を提供できる能力が求められます。また、他の技術者の指導・育成や、眼科専門医との連携を含む総合的なマネジメント能力も必要とされます。
2級は「業界のベースとなる眼鏡作製技能士」として、基本的な知識と技術を持ち、顧客のニーズに応じた適切な眼鏡を提供できる技術者を対象としています。販売されているレンズやフレームを活用しながら、正確な眼鏡作製を行うことが求められます。
国家資格のメリット
眼鏡作製技能士の資格を持つ技術者がいることは、購入者にとって高い専門性を持つ技術者がいるという安心感につながります。特に1級技能士は、より高度な知識と技術を持ち、顧客の潜在的なニーズを捉えた提案や、複雑な眼鏡の作製に対応できる能力が期待されます。一方、2級技能士も基本的な知識と技能を持ち、適切な眼鏡の提供が可能です。
認定眼鏡士制度からの移行措置
2022年3月末で終了した認定眼鏡士制度からの移行措置も設けられています。SS級およびSSS級の認定眼鏡士(2022年3月末現在)は、1級眼鏡作製技能士の特例講習を受講し、修了試験に合格すると、1級技能検定試験の学科および実技試験が免除されます。S級認定眼鏡士(2022年3月末現在)は、2級の特例講習を受講し、修了試験に合格することで、2級の学科試験が免除され、実技試験に合格すると2級技能士の資格を取得できます。
これらの特例講習会および修了試験は2027年3月まで実施される予定です。認定眼鏡士制度からのスムーズな移行が図られることで、これまでの経験を活かしながら、より高い技術と知識を持つ技能士が業界で活躍できる環境が整えられています。
認定眼鏡士(旧民間資格)
認定眼鏡士は、かつて公益社団法人日本眼鏡技術者協会(JOA)が認定していた、眼鏡の専門知識や技術を証明する民間資格でした。しかし、この制度は2022年3月末をもって終了しました。
認定眼鏡士の等級と特徴
認定眼鏡士には、S級、SS級、SSS級の3つの等級が設定されていました。S級は2年以下の専門課程を修了することが目安とされ、眼鏡専門学校を卒業すれば無条件で取得できる場合もありました。SS級は3年以上の専門課程修了が基準となっており、S級を取得した後、一定の実務経験と研修を積んで試験に合格することで取得できました。さらに、SSS級は認定眼鏡士の中でも最も高度な知識と技術を持つ資格とされ、業界の専門家として位置づけられていました。
認定眼鏡士の資格を持つ店員がいることは、顧客にとって一定の知識や技術を持つ技術者がいるという安心感につながっていました。特にSS級やSSS級の認定眼鏡士は、より専門的な知識や豊富な経験を持つと認識され、より丁寧な検眼や眼鏡選びのアドバイスが期待されていました。S級は比較的取得しやすい資格である一方、SS級やSSS級は高度な知識や実務経験が必要とされるため、技術力の証明としても高く評価されていました。特にSSS級は、業界内でも高い信頼を得る資格であり、トップレベルの技術者の証とされていました。
認定眼鏡士制度の廃止と国家資格への移行
認定眼鏡士制度が廃止された背景には、新たに国家資格である「眼鏡作製技能士」が制定されたことがあります。眼鏡業界の技術基準を国家資格に統一することで、資格制度の信頼性を向上させ、より明確な基準のもとで技術者を評価することを目的としました。
認定眼鏡士制度が終了した後も、資格を持つ技術者が培った知識や技術は、眼鏡作製やフィッティング、視力測定などの業務で引き続き活かされています。多くの元認定眼鏡士が、専門家として眼鏡店や業界内で活躍し続けています。
眼鏡作製技能士への移行措置
認定眼鏡士から眼鏡作製技能士への移行を支援するため、特例措置が設けられました。2022年3月末時点でSS級およびSSS級の認定眼鏡士は、1級眼鏡作製技能士の特例講習を受講し、修了試験に合格することで、1級技能検定試験の学科および実技試験が免除され、1級眼鏡作製技能士の資格を取得できるようになりました。また、S級認定眼鏡士は、2級の特例講習を受講し、修了試験に合格することで、2級の学科試験が免除され、実技試験に合格すると2級眼鏡作製技能士の資格を取得できました。
これらの特例講習および修了試験は、2027年3月まで実施される予定です。認定眼鏡士としての経験を活かしながら、国家資格へと移行することで、より専門的な技術を証明し、眼鏡業界において信頼される技術者としての地位を確立することが期待されています。
オプトメトリスト(主に海外の資格)
オプトメトリストは、主に海外で認められている視覚ケアの専門資格です。特にアメリカでは、目の健康管理において重要な役割を担う専門職として広く認識されており、眼鏡店にはオプトメトリストが在籍し、眼鏡を作製できる店舗も存在します。オプトメトリストは、目の病気の有無を確認し、視力測定を行い、適切な眼鏡を提供することを主な業務としています。国によっては、検眼に関して医師と同等の権限を持つ法的資格として認められています。
海外と日本のオプトメトリストの違い
海外と日本におけるオプトメトリストの最大の違いは、その法的地位と業務範囲にあります。海外では、オプトメトリストは目の健康管理を担う法的資格であり、目の病気の診断や治療に関与できる国もあります。一方、日本ではオプトメトリストは国家資格ではなく、独立した法的資格制度も存在しません。
日本には、眼鏡作製に関する国家資格として「眼鏡作製技能士」、視機能の検査や訓練を専門とする医療資格として「視能訓練士」があります。眼鏡作製技能士の主な業務は、適切な眼鏡を提供するための視力測定、フレーム選びのアドバイス、フィッティングなどであり、目の病気の診断や治療といった医療行為は含まれていません。
日本におけるオプトメトリストの認定
日本では、日本オプトメトリック協会(JOA)がオプトメトリストの認定を行っています。JOAは、世界水準のオプトメトリーを日本に広めることを目的として設立され、オプトメトリストの試験および認定を継続的に実施しています。試験勉強の環境整備や認定制度の改善に取り組み、生涯教育制度や臨床技術向上のセミナーなども積極的に開催しています。
また、キクチ眼鏡専門学校はJOAのカリキュラム認定を受けており、在学中にオプトメトリストの資格取得を目指すことが可能です。
オプトメトリスト資格の意義
オプトメトリストという名称は、国際的な専門資格という印象を与え、高度な知識と技術を持つ専門家としての信頼感につながる可能性があります。海外のオプトメトリストは、幅広い視覚ケアの知識と技能を持つ専門家として認識されており、日本のJOA認定オプトメトリストにも同様の期待が寄せられることが考えられます。
JOAは、最新の技術と知識を維持し、自己研鑽を続ける姿勢を理念として掲げています。これらの活動を通じて、質の高いビジョンケアを提供できる人材の育成を目指しており、オプトメトリーの重要性を日本国内でも広めることに努めています。
視能訓練士(国家資格・医療系)
視能訓練士は、眼科医療において視機能の専門家として位置づけられる国家資格です。1971年に制度が誕生し、小児の弱視や斜視の矯正、視機能の検査を行う専門技術職として活動しています。乳幼児から高齢者まで幅広い世代の目の健康を守る役割を担い、眼科医と連携しながら検査や訓練を行います。
視能訓練士の主な業務
視能訓練士の業務は多岐にわたります。視力検査、屈折検査、眼鏡処方検査、コンタクトレンズ検査、視野検査などの一般的な眼科検査を担当するほか、斜視や弱視の患者に対して視力向上や正常な両眼視機能の獲得を目的とした視能訓練を実施します。
また、眼疾患や外傷によって視機能が低下したロービジョンの方への支援も重要な業務の一つです。ロービジョンケアでは、拡大鏡や遮光眼鏡の選定、日常生活における工夫のアドバイス、支援機関の紹介などを行い、見えにくさを補うことで生活の質(QOL)の向上を目指します。さらに、3歳児健康診査などの健診業務にも携わり、眼疾患の早期発見に貢献しています。
視能訓練士の資格取得方法
視能訓練士の資格を取得するには、指定の視能訓練士養成施設(専門学校や大学など全国に約30校)で3年以上の教育課程を修了するのが一般的です。高校卒業後に養成所を卒業する以外にも、短大卒以上の学歴を持ち、指定の養成所で1年以上修業することで受験資格を得ることができます。また、外国の視能訓練士学校を卒業し、厚生労働大臣が同等以上の技術があると認めた場合も受験資格が付与されます。その後、年に1回実施される国家試験に合格することで資格を取得できます。
眼鏡店における視能訓練士の役割
眼鏡店に視能訓練士がいることで、より専門的な視力測定を提供できる可能性があります。斜位や両眼視機能に問題を抱える顧客に対して、眼鏡店のスタッフよりも深い知識を持ってアドバイスを行うことができ、必要に応じて眼科受診を勧めることも可能です。
また、初めて眼鏡を作る顧客や、目の状態に不安がある顧客に対して、医学的な知識をもとにした眼鏡選びの相談に対応できます。さらに、眼科との連携をスムーズに行う役割を果たし、視機能に関する総合的なサポートを提供することも期待されます。
視能訓練士と眼鏡作製技能士の違い
視能訓練士は、視力測定や視機能の検査・矯正を専門とする医療系の資格であり、医学的な知識に基づいたアドバイスを行うことができます。一方で、眼鏡作製技能士のようにレンズ加工やフレーム選びに関する専門知識を深く学ぶわけではありません。そのため、眼鏡店で視能訓練士が活躍する場合、視力測定や眼鏡の提案において強みを発揮しつつ、眼鏡作製技能士と連携することで、より専門的なサービスを提供できるでしょう。
顧客にとって、眼鏡店に視能訓練士が在籍していることは、視力測定や目の健康相談において安心感につながります。特に、目の病気や両眼視機能に不安を抱えている人にとっては、専門的なアドバイスを受けることができる大きなメリットとなります。
その他の眼鏡関連資格
眼鏡に関する資格には、眼鏡作製や視能訓練のほかにも、特定の分野に特化した専門資格があります。ここでは、コンタクトレンズ検査技師と光学技術者・光学機器関連資格について紹介します。
日本コンタクトレンズ学会認定 コンタクトレンズ検査技師
コンタクトレンズ検査技師は、日本コンタクトレンズ学会が認定する民間の専門資格で、コンタクトレンズの装用指導や検査を行うための知識と技術を証明するものです。資格を取得するには、所定の研修を受け、試験に合格する必要があります。
この資格を持つ技術者の主な役割は、コンタクトレンズのフィッティングや視力測定の補助を行うことです。眼鏡全般を扱う技術者向けの資格というよりは、コンタクトレンズを専門に取り扱う眼科や販売店のスタッフに適した資格といえます。コンタクトレンズを適切に処方するための知識や、装用時の注意点を指導するスキルが求められるため、コンタクトレンズに関する専門的な業務に携わる人にとって有益な資格です。
光学技術者・光学機器関連資格
光学技術者・光学機器関連資格は、レンズの製造・加工・設計に関する技術者向けの資格です。取得するためには、所定の研修を受け、試験に合格する必要があります。
これらの資格を持つ技術者は、眼鏡レンズの製造や品質管理、設計などを担当します。眼鏡の販売やフィッティングに直接関わるというよりは、レンズメーカーや研究職といった技術系の職種に適した資格です。眼鏡の素材開発やレンズの光学設計、精密加工の分野で活躍することができ、眼鏡業界の技術革新を支える役割を担っています。
眼鏡関連の資格の種類:取得方法と補足
- 眼鏡作製技能士になるには?
- 資格取得のための専門学校など
- 検眼士について
- 資格が顧客に与える安心感と技術力の違い
眼鏡作製技能士になるには?
眼鏡作製技能士は、2022年に新設された眼鏡作製に関する唯一の国家資格であり、眼鏡業界における技能を国が客観的に評価するものです。この資格を取得するには、いくつかの経路があります。
受験資格を得る
眼鏡作製技能士には1級と2級があり、それぞれ受験資格が異なります。
2級を受験するには、眼鏡作製に関する業務に2年以上の実務経験が必要です。また、2年制以上の通信制眼鏡専門学校を修了した場合も受験資格を得られます。
1級を受験するには、2級の技能検定に合格した後、眼鏡作製に関する業務に2年以上の実務経験を積む必要があります。また、2級を取得していなくても、眼鏡作製に関する業務に5年以上の実務経験がある場合は受験資格を得られます。さらに、3年制以上の全日制眼鏡専門学校を卒業した者や卒業見込みのある者で、公益社団法人日本眼鏡技術者協会会長が受験を認めた場合、または外国の同等の学校を卒業し、同協会会長が認めた場合も受験可能です。
技能検定試験に合格する
受験資格を満たした後、学科試験と実技試験の両方に合格する必要があります。
学科試験では、視機能、光学、商品知識、眼鏡販売、加工作製、フィッティング、企業倫理・コンプライアンスなど、眼鏡作製に関する幅広い知識が問われます。試験形式は選択式と真偽法が採用されています。
実技試験では、視力測定、フィッティング、レンズ加工の3科目が実施されます。顧客の要望を正しく把握し、正確な視力測定に基づいた適切なレンズとフレームの選定、快適な装用感を実現するための知識と技能が評価されます。
試験は、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・岡山・福岡の7会場で行われ、1級・2級ともに同じ日程で実施されます。受検手数料は、1級の学科試験が8,900円、実技試験が29,900円、2級の学科試験が8,900円、実技試験が29,900円(いずれも非課税)となっています。受付期間や試験日程、合格発表の時期は級によって異なります。
認定眼鏡士からの移行措置
2022年3月末で終了した認定眼鏡士制度の有資格者には、これまでの実績を考慮した特例措置が設けられています。
SSS級およびSS級の認定眼鏡士は、1級眼鏡作製技能士の特例講習を受講し、修了試験に合格することで、1級の学科および実技試験が免除され、1級眼鏡作製技能士となることができます。
S級認定眼鏡士は、2級の特例講習を受講し、修了試験に合格すると、2級の学科試験が免除され、実技試験に合格することで2級眼鏡作製技能士となります。
これらの特例措置は、2027年3月まで実施される予定です。
専門学校での学習
眼鏡作製技能士の資格取得を目指せる専門学校が各地にあり、学科知識だけでなく、実技に必要な技術も体系的に学ぶことができます。専門的な教育を受けることで、試験合格の可能性が高まり、現場で即戦力となるスキルを身につけることができます。
眼鏡作製技能士の意義
眼鏡作製技能士の資格は、眼鏡業界で働くうえで高い信頼性を示すとともに、技術や知識レベルの向上、社会的地位の向上、さらには処遇の改善やキャリアアップにもつながる重要な資格です。眼鏡技術者としての専門性を証明するためにも、取得を目指す価値のある資格といえるでしょう。
資格取得のための専門学校など
眼鏡作製技能士
眼鏡作製技能士の資格を目指す場合、主に眼鏡専門学校で専門知識と技術を体系的に学ぶ方法があります。3年制以上の全日制眼鏡専門学校を卒業することで、1級の受検資格が得られる場合や、公益社団法人日本眼鏡技術者協会会長が受検を認める場合もあります。また、2年制以上の通信制眼鏡専門学校を修了することも、2級の受検資格の一つです。眼鏡店での実務経験も重要なルートの一つであり、2級の受検には2年以上の実務経験が、1級の受検には2級合格後2年以上の実務経験または5年以上の実務経験が必要です。
取得可能な教育機関:
- 東京眼鏡専門学校(東京都)
眼鏡技術者の養成校として、国家検定資格である眼鏡作製技能士の取得を目指すカリキュラムを提供しています。 - キクチ眼鏡専門学校(愛知県)
眼科専門医と連携し、視力保護分野を推進する視覚のプロを育成。国家検定資格・眼鏡作製技能士(1級)の受検資格を取得できます。 - 専門学校 ワールドオプティカルカレッジ(岡山県)
眼鏡作製技能士〈国〉1級を目指すカリキュラムで、眼の健康やメガネについて学べます。
通信教育も、働きながら眼鏡作製技能士の資格取得を目指す手段の一つです。2年制以上の通信制眼鏡専門学校を修了することで、眼鏡作製技能士2級の学科試験の受験資格が得られます。ただし、通信教育の場合、実技を学ぶ時間は専門学校と比較して短くなる可能性があるため、注意が必要です。
視能訓練士
視能訓練士の国家資格を取得するには、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した視能訓練士養成施設(専門学校や大学など)で3年以上必要な知識と技能を修得した後、国家試験に合格する必要があります。養成施設への入学資格は主に高校卒業以上であり、所定のカリキュラムを修了することで国家試験の受験資格が得られます。
取得可能な教育機関:
- 東京医薬看護専門学校(東京都)
視能訓練士科(3年制)を設置し、視能訓練士の国家資格取得を目指すカリキュラムを提供しています。 - 新潟医療福祉大学(新潟県)
視機能科学科を設置し、視能訓練士の養成を行っています。 - 名古屋医専(愛知県)
視能訓練学科(昼)を設置し、視能訓練士の国家資格取得を目指す教育を行っています。 - 大阪医専(大阪府)
視能訓練学科(夜)を設置し、働きながら視能訓練士を目指すことが可能です。 - 吉田学園医療歯科専門学校(北海道)
視能訓練学科を設置し、視能訓練士の養成を行っています。 - 浦和専門学校(埼玉県)
視能訓練士科を設置し、視能訓練士の国家資格取得をサポートしています。
オプトメトリスト
オプトメトリストは、主に民間資格であり、取得方法や必要な教育課程は各団体や教育機関によって異なります。
取得可能な教育機関:
日本では、オプトメトリストは国家資格としては認められていませんが、日本オプトメトリック協会(JOA)が認定する資格として存在します。この資格を取得するためのカリキュラムを提供している専門学校として、キクチ眼鏡専門学校があります。同校はJOAのカリキュラム認定を受けており、在学中にオプトメトリストの資格取得を目指すことが可能です。
各資格の取得を目指す際は、希望する進路やキャリアプランに合わせて、適切な教育機関を選択することが重要です。
検眼士について
日本における「検眼士」の現状
日本では「検眼士」という名称が使われることがありますが、これは正式な資格ではなく、法的な定義もありません。一部の眼鏡店や企業では、視力測定や眼鏡の調整を行うスタッフを「検眼士」と呼ぶことがありますが、統一された資格制度は存在しません。そのため、「検眼士」という名称が指す具体的な技能や業務範囲は曖昧であり、資格としての実態がない点に注意が必要です。
現在、日本で眼鏡作製に関する唯一の国家資格は、2022年に制定された眼鏡作製技能士です。また、視機能の検査やリハビリを専門とする国家資格として視能訓練士も存在します。これらの資格が、正式に視力測定や眼鏡作製、視機能の改善に関わる専門職として認められています。
海外のオプトメトリストとの比較
海外では、日本で「検眼士」と呼ばれるような職業に相当する専門資格として「オプトメトリスト(Optometrist)」が存在します。オーストラリア、アメリカ、カナダなどでは、オプトメトリストは国家資格を持つ専門職として法的に認められています。
アメリカの眼鏡店には、単に眼鏡を販売する店舗と、オプトメトリストが在籍し検眼や眼鏡作製を行う店舗の両方があります。オプトメトリストは、目の病気の有無を確認し、視力測定を行い、適切な眼鏡を処方することを主な業務としています。また、国によっては検眼に関する権限が医師と同等に認められる場合もあります。
一方、日本ではオプトメトリストの国家資格制度は導入されておらず、視力測定や処方は主に眼科医が行う体制が確立されています。ただし、日本オプトメトリック協会(JOA)が認定する民間資格として「JOA認定オプトメトリスト」があります。JOAは、世界水準のオプトメトリーを日本に普及させるために設立され、独自の認定資格を提供しています。
JOAの方針として、国家資格である眼鏡作製技能士の枠組みの中で、より質の高いビジョンケアを推進できる人材の育成を目指すことが示されています。このように、海外のオプトメトリストは目の健康管理において重要な役割を担う法的資格であるのに対し、日本の「検眼士」は正式な資格としての制度がなく、眼鏡作製に関する国家資格としては眼鏡作製技能士、視機能の検査や矯正を専門とする国家資格としては視能訓練士が存在しています。
資格が顧客に与える安心感と技術力の違い
眼鏡店において、資格の有無は顧客に安心感を与えるとともに、技術力の違いを示す一つの指標となります。資格を持つ技術者が在籍していることは、一定の知識や技能が保証されていることを意味し、眼鏡を購入する際の信頼性を高める要素となります。
国家資格と民間資格の違い
資格には、国が定める国家資格と、民間団体が認定する民間資格があります。眼鏡作製技能士と視能訓練士は国家資格であり、国の制度によってその技能レベルが客観的に評価されます。国家資格を持つ技術者がいることは、顧客にとって一定以上の知識や技術が保証されていることにつながります。
特に眼鏡作製技能士は、視力測定、レンズやフレームの販売、加工、フィッティング、アフターケアといった眼鏡作製全般の知識と技能を評価する国家資格であり、今後の業界標準となる可能性が高いとされています。
一方、かつて存在した認定眼鏡士は民間資格でしたが、資格を持つことで顧客に一定の技術力を証明し、安心感を提供していました。しかし、この制度は2022年に廃止され、現在は眼鏡作製技能士への移行が進んでいます。また、海外で広く認められているオプトメトリストは、日本では民間資格でありながら、国際的な専門資格というイメージから、高度な知識と技術を持つ専門家として信頼を得る要素となる可能性があります。
資格だけでなく、経験やコミュニケーション能力も重要
資格を持つことは、顧客に安心感を与える大きな要素の一つですが、資格があるからといって必ずしも高い技術力が保証されるわけではありません。実際に、認定眼鏡士の等級(S級、SS級、SSS級)によって技術レベルの差があるとされていましたが、S級は比較的容易に取得できる場合があり、より高い技術力を期待するのであれば、SS級やSSS級の認定を持つ眼鏡士がいる店舗を選ぶことが望ましいと考えられていました。
眼鏡作製技能士についても、特例措置で認定された技能士と、現行の試験に合格した技能士とでは、技術レベルに差があると指摘されることがあります。そのため、資格の有無だけでなく、実際にどのような経験を積み、どのような技術を持っているかが重要になります。
また、顧客のニーズを正しく理解するコミュニケーション能力、適切な眼鏡を提供するための測定・加工・調整能力、正しい装用方法やケア方法を説明する説明能力なども、眼鏡技術者にとって欠かせないスキルです。技術力だけでなく、顧客に寄り添った対応ができるかどうかが、満足度を大きく左右します。
信頼できる眼鏡店を選ぶために
眼鏡店を選ぶ際、眼鏡作製技能士の資格を持つ店員がいるかどうかは、信頼できる店舗を選ぶための一つの基準となります。特に国家資格である眼鏡作製技能士は、一定の知識や技能レベルが国によって保証されているため、資格を持つ技術者がいる店舗は、より専門的な対応が期待できます。
かつて、SSS級認定眼鏡士は業界でトップクラスの技術者を示す証明とされていましたが、現在は眼鏡作製技能士への移行が進んでいます。今後、眼鏡作製技能士が業界標準となるにつれて、この資格を持つ店員がいることが、より信頼性の高い眼鏡店を選ぶ際の重要な要素となるでしょう。
しかし、資格の有無だけでなく、店舗で実際に相談し、自分の希望や不安をしっかり伝えられるかどうかも大切です。価格だけでなく、店員の知識や技術、検査の丁寧さ、アフターケアの充実度などを総合的に判断し、自分に合った眼鏡店を選ぶことが重要です。
眼鏡関連の資格の種類と特徴:まとめ
記事のポイントをまとめます。
- 眼鏡関連の資格には国家資格と民間資格がある
- 眼鏡作製技能士は唯一の国家資格で業界標準となる可能性が高い
- 視能訓練士は医療分野での視機能検査やリハビリを担当する国家資格
- 認定眼鏡士は民間資格として存在していたが、現在は廃止されている
- オプトメトリストは海外では国家資格だが、日本では民間資格として扱われる
- コンタクトレンズ検査技師はコンタクトレンズのフィッティングを専門とする資格
- 光学技術者資格は眼鏡レンズの製造や設計に特化した技術者向け資格
- 眼鏡作製技能士の取得には学科試験と実技試験の両方が必要
- 眼鏡作製技能士1級と2級では求められる技術レベルが異なる
- 国家資格を持つ技術者がいる眼鏡店は信頼性が高いとされる
- 眼鏡作製技能士は今後の業界標準となる可能性がある
- 資格だけでなく、実務経験やコミュニケーション能力も重要なスキルである
- 眼鏡関連資格を取得することで、キャリアアップの道が広がる
- 日本では「検眼士」は正式な資格ではなく、統一された制度がない
- 眼鏡関連資格の取得には、専門学校や研修を活用するのが効果的